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清水 哲朗 Tetsuro Shimizu

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偶然の出会いでユキヒョウに一目ぼれ

写真家・清水哲朗氏は20年以上にわたって、人物、生活、自然、動物など幅広い分野でモンゴルを撮影してきました。そのきっかけとなったのが、ユキヒョウの撮影です。ユキヒョウはアジアの高地に住み、生態もまだよく分かっていない幻の動物です。撮影は困難を極め、しばらく中断していましたが、長い準備期間を経て、再びユキヒョウに挑もうとしています。

編集委員

どのようなきっかけでユキヒョウに興味を持つようになったのですか。

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編集委員

1997年に竹内敏信さんがモンゴルで写真展を開いたときに、写真展のアシスタントとして同行されたそうですね。最初にモンゴル行きの話を聞いたときは、どんなお気持ちでしたか。

清水

自分の中で気持ちが盛り上がっていたところに、降って湧いたようにその話が来たので、すごくうれしかったですね。せっかくだから何か情報を得たいと思って、現地で写真家に聞いてみたら、「ユキヒョウ?いる、いる。たくさんいるよ。」と言う。それなら本格的にやってみようかと思いました。

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編集委員

その後、助手を卒業してすぐにユキヒョウの撮影に行かれています。このときは、どんな取材でしたか。

清水

いろいろ大変なことが多かったですね。案内をしてもらった方になかなかユキヒョウがいそうな場所には連れて行ってもらえなかったり、借りていた車が壊れて10日も足止めされたり…。そんな中で唯一良かったのは、ドルジさんという遊牧民に出会ったことです。その土地で動物に一番詳しい人でした。ユキヒョウが住んでいる山を知りたかったのでラクダに乗って移動したり、テントに泊まったりしながら、1か月半一緒に過ごしました。

そのとき、ドルジさんは59歳、僕が23歳です。ドルジさんは「胸が痛くて苦しい。もう俺、死にそうだ」とか言っているのに、ものすごい健脚なんです。山の中をカモシカのように駆け回る。僕は超望遠レンズなどの機材を持っていたこともあって、まったく付いていけない。しかも、遊牧民って後ろを全然振り返らないんです。どんどん差が付いていくばかりで衝撃が大きかったです。


初めてドルジさんとユキヒョウを探した話は、フォトエッセイ『モンゴリアンチョップ』(2008年、エヌエヌエー)で詳しく紹介されている。

編集委員

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清水

実は、遭遇しているんです。ドルジさんが、「あそこにいる」って教えてくれたのですが、僕には見えなかった。ほかの動物は大丈夫ですが、ユキヒョウはまだら模様の斑点が完全に岩に溶け込んでしまうので、どうしても見えないんです。ドルジさんは10キロ以上先の動物が見えて、しかもそれがオスかメスかまで分かってしまう。僕は遊牧民の目がそこまで良いとは想像していなかったので驚きました。

ユキヒョウ撮影を中断した理由


清水氏からカメラを譲り受けた遊牧民のドルジさんは、動物の写真を撮り続け、後に写真集まで出版した。

編集委員

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清水

しばらくモンゴルに通ってドルジさんに案内してもらいました。でも、毎日山を歩いても全然出会えない。ユキヒョウだけじゃなくて、ほかの動物にも近づけない。自分自身がまだ若くて、早く結果が欲しい時期だったので、ちょっとつらかったですね。1999年に1枚だけ写真に収めることができたのですが、四つ切にプリントしてもユキヒョウはわずか2センチの大きさで、それは自分が撮りたい写真ではなかった。そのときに、こうなるのは僕自身がモンゴルを知らないからではないかと考えたんです。モンゴルのことをもっと理解していたら、無駄がなくなり、ユキヒョウに近づけるのではないかと。それでユキヒョウの撮影はいったん棚上げすることにしました。

編集委員

ユキヒョウから離れて何をテーマにするかはすぐに決まったのですか。

清水

動物を探しに山に入るとき、情報は遊牧民から得ているわけです。この人たちを撮ったらおもしろそうだなという考えはありました。それに、せっかく草原の国に行ったのに、それまで砂漠しか見ていなかった。いろんな民族がいて、いろんな生活があるのだから、もっと幅広く見ておいた方がいいかなとも思いました。

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編集委員

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清水

いろんな撮影をする中で、もし動物に出会えたら撮ろうというスタンスでした。遊牧民からは、家畜を連れていたらオオカミをすごく近くで見たというような話をたくさん聞いていました。だから、僕も彼らと一緒にいたら、そういうチャンスに恵まれるんじゃないかと思ったんです。そうやって遊牧民のそばにいると、普通に生活しているその向こうをガゼルの群れが走っていたり、身近なところに珍しい動物がいたりするのに気づくようになりました。

編集委員

実際にオオカミの子どもも撮影されていますね。

清水

クロハゲワシを撮りに行った後、ほかの鳥がいるポイントを探しに行ったら、子犬のような鳴き声が山中に響き渡っていたんです。もしかしたらオオカミかもしれないと思って、地面に穴がないか探していたら、ひょこんとオオカミが顔を出していた。オオカミは子どもが巣立つまでに何度か巣穴を引っ越すのですが、この子は体力がなくて置いていかれたのかもしれない。その気になれば持ち上げられるくらい近くまで行きました。もちろん触らないですけどね。帰国まで何日か空いたので、そこに行って、たまたまこういう結果を得たのですが、モンゴルでの動物撮影は実はそのぐらいがちょうどいいさじ加減ではないかという気がしています。

編集委員

一方で、ゴビグマはそれを目的に撮影に行ったのですか。

清水

そうですね。これは完全に狙いに行きました。というのは、ゴビグマが生息しているのは人が入ってはいけない特別保護区なので、撮影に許可が必要なのです。ゴビグマは25頭ぐらいしかいないと言われている希少な動物なので、撮れるうちに撮っておこうと思いました。

編集委員

こっちに向かってきているようで、ちょっと怖い状況にも見えるのですが…。

清水

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独自のアプローチでユキヒョウをとらえる

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いよいよユキヒョウ取材を再開されたということですが、なぜ今なのかについて教えてください。

清水

時間をかけてモンゴルを理解し、モンゴルでの生活が当たり前になったのが一番大きいですね。(写真を見ながら)ほんの一例ですが、おいしい水があると言われて行ってみたら、こんなふうに車の轍に流れているような水だった。そういうことも当たり前だなと受け入れられるようになりました。僕自身、もうほぼモンゴル人になれたんじゃないかと思うくらいです(笑)。

編集委員

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清水

今までは漠然とユキヒョウを撮りたいと考えていました。でも、仮にユキヒョウを撮ったとしても、それだけではモンゴルを伝えられない。こんなにすごくて、翻弄されるような土地に住んでいる動物だということが分からないと、単なる紹介に終わってしまう。もっと総合的にモンゴルをとらえて伝える必要があるのですが、具体的なイメージがようやく見えてきました。

遊牧民にユキヒョウのことを聞くと、家畜を襲う害獣という扱いなんです。この1月に行ったときも、先月20頭ぐらいやられたという遊牧民がいました。ユキヒョウはゲルの近くで家畜を襲うと、人間が行ってもしばらくそこから動かないで食べているそうです。そんな姿をバイクとか車越しに撮りたい。それは動物写真家が撮らない写真だし、文明化するモンゴルを写してきた僕らしいアプローチではないかと思っています。それこそが遊牧民が見ているユキヒョウの姿であり、そこに一番のリアリティがあることに気づいたんです。

今までのように、山の中をひたすら足跡を追っていくスタイルもやりながら、遊牧民のところに来たチャンスを逃さないようにしたい。ここにくるまでに20年かかりましたが、いろいろな条件を一つ一つクリアしてようやく準備が整いました。あとはチャンスさえあれば、確実にモノにできると思います。

文:岡野 幸治

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